もうじき七五三だとかで、近所の呉服屋さんのショーウインドーも子供向けの和服にディスプレイが切り替わっている(普段は当然大人向け)。そういえば私が和服を着たのは7歳の七五三のただ一度きりである。当時は京都に住んでなかったのだが、それでも近所の呉服屋さんで着物を買ってもらったのを覚えている。
当時の私は赤い着物が大好きで、買ってもらうなら絶対赤い着物でと決めていた。ピンクというより赤が良かったのだ。あとかんざしは絶対キラキラした銀色のちっちゃな短冊がたくさんついているタイプのものを、とずっと思っていた。
しかし母は私に渋いうぐいす色の着物を強硬に勧め、赤い着物がほしいと言っても断固受け付けなかった。このうぐいす色の着物がイヤだと言うなら買わないとまで言うほどだった。仕方なく買ってもらったがたかだか7歳の子供にとってうぐいす色の着物が嬉しいわけがなく、私は本当にそれがいやだった。かんざしも短冊がついたものじゃなくぼんぼり系の、私から見たらダサくて冴えないデザインのものを強引に選んでしまった。七五三のときにそれらを身につけ写真を撮ったが、私はこの上もなく不機嫌な表情をしていた。そして七五三に対していい思い出も持てずにいた。
今日、アルバム整理が趣味の父がその写真を見つけ私に見せてくれた。今になってその写真を見ると、とてつもなく地味で渋かったうぐいす色の着物が私にはとても似合っていたのでビックリした。私はちっちゃいころ今よりもずっと色が白く、赤い着物をそこに組み合わせると悪趣味になりかねない感じなのだ。
しかしシックなうぐいす色だと着物に顔が負けることもないし、ほんの少しだが品が良く見えるのである。スタイリストの才能もあったと言われた母の見立てに本当に驚かされた。あの時赤い着物を着てたらもう目も当てられない仕上がりになってただろうなあ。