プリントゴッコが販売中止になるらしい。パソコンに押されてしまったとのこと。まあ自然淘汰といえば自然淘汰なのだろう。道具というものは古来からそうやって一つ一つ消えていくものだし。しかしなんというか切ねぇなあ、と思ってしまう。というのも私は子供の頃から、毎年毎年年賀状の時期になるとプリントゴッコが欲しいと思って生きてきたからだ。クリスマスプレゼントのリクエストとしてメモに『プリントゴッコ』と書いたことも一度や二度ではない。しかしプリントゴッコがやってきたためしはなかった。
高校生になりバイトをするようになって、そのバイト代で買おうとしたこともあるのだが、なぜか両親から猛烈な反対を食らって断念せざるを得ない状態になり、そこでも結局買えずじまいだった(私は強い反対に遭うと「私が間違っているのだな」と思ってやめてしまう性格なのだ)。
うちの両親はいささか頭が古く、そのことを誇りに思っているフシがあったので「機械に頼った年賀状など手抜きでしかない、言語道断」「きれいな印刷より、ヘタでも手書き」という『手書き幻想』をガッチリ抱いて生きている人たちだった。そんな親から見たら子供がプリントゴッコで年賀状を書くだなんていうズボラは許しがたい行為だったらしいのだ。友達はばんばんプリントゴッコで作成して送ってきてくれてたんだけどもね。しかしそこは、子育ての際の伝家の宝刀「よそはよそ、うちはうち」でこちらを黙らせてしまうわけですよ(笑)。
ま、そんなこんなで結局プリントゴッコには指一本触れないまま年を取ってしまったわけですが、あれだけ手書き手書き言うてた親父が毎年私に「年賀状パソコンで印刷してくれ」と言うのはどういう了見だ、と思わないでもない日々である。