2008年09月06日

孤独な声

『貴様に脱帽』さんのサイトにコメントしたいのに『認証文字を入力してください』のメッセージに阻まれちっともコメントできずに悲しい思いをしているまる子ですこんばんは。『認証文字を〜』って出てくるのに、その肝心の認証文字自体が表示されないんですよ。打つ手なし。

昨日見た『孤独な声』。ロシア(ソ連)の映画監督、アレクサンドル・ソクーロフが、卒業制作で作ったというデビュー作のようなものである。政治的に色々複雑で長らく上映禁止だったいわくつきのものだけれど、のほほんと日本で生きてきた私の目にはどこがどう政治的にやばいのかすらわからない作品である。これは原作つきのもので、その原作小説そのものが発禁だったということなので、その流れなのかもしれないが、門外漢の私がこれ以上語る資格もないので黙ります(どうも主人公の性格が国の方針にそぐわなかったということらしいのだけど)。

ストーリーは内戦で心に深手を負った主人公ニキータと、彼の幼馴染みでその妻となる苦学生リューバの生活を見つめているという体裁で、それ以外の登場人物はあまり深く関わってこない。特にニキータには友人もいないし、父親とも心理的に距離をとっており、リューバだけを見ているような状態である。といっても情熱的に迫るとかそういうシーンはほとんどなく、ニキータは愛する者、そして彼女との暮らしにすら怯えを抱いているのだ。むしろリューバのほうが積極的で、その愛を受け取りたいのに受け取る自信が持てずにニキータは煩悶する。

リューバは取り立てて美人ではないが、夏の日差しのように真っ直ぐで清々しく、やさしい心と深い情愛を持った女性だ。貧しい暮らしをしているがもとは裕福な家庭に育ち、ガツガツした下品なところなど微塵もない魅力的な人物である。戦争でおそらく筆舌に尽くしがたい体験をしたであろうニキータには、その妻の愛の深さが怖いのだ。疲弊しきった心では強い愛情を受け止めきれないのだろう。

リューバは決して押し付けがましい態度はとらないし、ニキータに愛を求めまくる人間ではない(むしろ一度プロポーズを断る)。彼女と暮らせばきっと幸せになれるとわかっているのに、その幸せさえ支えられず、とうとうニキータは家出してしまう。そして街をさまよう。ニキータが心身ともにさまようシーンはどこか茫漠としているのに強烈な部分があったりして、そのバランスの悪さが悪夢のようだ。

結局その放浪は意外な形で終わりを告げ(父親がニキータを見つけ、ニキータに去られたリューバが何をしたかを知らされる)、ニキータは自宅に戻る。彼女及び、彼女との暮らしを失わないためには真剣に向き合うしかないことに気づくのだ。怯えを捨て、正面から彼女を受け止める決意が描かれ話は終わる。そういう意味では本当にシンプルなラブストーリーなのだ。

私はラブストーリーは苦手だが、それはハートマークを飛び散らかしているようなものがダメなのであって、こういうストーリーはむしろ好きなのだ。愛の不自由さ、愛の不可能性をナルシシズム抜きで描写しているものなら大歓迎なのだ。しかしどうしても恋愛って自己愛が正義になる要素が強いので、なかなかそういう作品に出会えないのだけどね。人物がどこか酔っ払ってるんだよな。そういうのはノーサンキューだ。


posted by まる子 at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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