2005年10月02日

日陽はしづかに発酵し…

「ひびはしづかにはっこうし…」と読む(しづか、はわざと)。

これは私の大っ好きな映画である。『七人の侍』とかも大好きだけどね。アレクサンドル・ソクーロフ監督の作品で、知ってる人のほうが少ない映画だと思う。1988年の作品なんで、もうだいぶ前の映画だ。時代の最先端を思わせるものが何一つ登場しないので、いつ見ても古めかしく感じる作品かもしれない。

ストーリーは、ほんとあって無きがごとくというか、あるにはあるんだろうけど明確な起承転結が存在しない。主人公の医師、ロシア人のマリャーノフ(ジーマと呼ばれている。以下ジーマ)は、トルクメニスタン(当時はソ連の構成国だった)で診察をしながら『小児の高血圧と信仰』というテーマで論文を書いている。彼は自分はどこにいようと同じだという考え方の持ち主で、故郷に思い入れもなければ、今自分が暮らしている街にも執着らしい執着は持たない。他人に対しても非常に素っ気なく、たった一人の親友とだけ親しくしている。

そんなジーマの周辺で、異変が起こり始める。いきなりゼリー漬けの伊勢海老が届いたり(ジーマの姉が注文したことになっている)、呼びもしていないその故郷の姉(あまり仲がよくない)が突然訪ねてきたり。しかも謎の海老は姉が注文したものではない。ライフルを持った謎の男が突然ジーマの家に篭城し「小説を書くな」と強要したりもしてくる(この男は結局軍隊に射殺される)。ピストル自殺をした男と対話(死体置き場で直接話しかけられる)するはめになったりもする。

そうかと思えば苦渋に満ちた顔の幼児が現れ、住み着こうとしたりする。ジーマも珍しくその幼児とは仲良くするのだが、結局突然取り上げられてしまう。最後には親友の家にも異変がおき始め、壁に黒い奇怪な物が貼り付き汁を出し始める。しかしその親友はそのことを全く意にも介さない。結局その親友はトルクメニスタンを離れていくことになり、ジーマは彼を見送って話は終わる。

ストーリーを書いても何がなんだかわからないのだが、実際こんな話なのだ。しかし私が好きなのは筋立てではなく、この作品の持つ雰囲気なのである。

トルクメニスタンはソ連の一部とはいえ、アフガニスタンと国境を接する、とても暑い国なのだ。そこに暮らす人々は、じりじりとした暑さの中で暮らし、何かを待ち続けているようにも、全てをあきらめているようにも見える。澱のようにたまっていく倦怠と暑さが、まさに発酵しているようである。画面が黄色く処理されているので、じっと西日に照らされているような感覚になる。

あと、ジーマ役の男性が絶品である。この人は当時プロの俳優ではなかったそうだが(今プロなのかどうかわからない)、なんとも言えずセクシーな雰囲気の人なのだ。人格に全く脆さが見えないジーマにぴったりのルックスで、私は大好きである。ともするとかなり薄情で嫌な奴に見えかねないジーマだが、彼のおかげで魅力的なキャラになっていると思う


posted by まる子 at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。