昨夜BSで『七人の侍』をやっていたので見てしまった。大好きだけど長いからどうしようかなあ…と思いつつ見始めるとついつい。でも最後らへんになると疲れてきてリタイアしちゃいました。見るのに体力いる映画だよなああれ。私があの映画で好きなのはストーリーや細部まで完全に手を抜いていない美術ももちろんあるんだけど、人物描写がとにかく好きなのだ。個性のある大人とはこういうものか、と思わされる。
やんちゃな荒くれ者の菊千代や、ストイックでクールな九蔵はともかく、侍たちの多くが一見無個性に見えるくらいに発言、行動ともにある意味『普通』なのだ。エキセントリックな部分がほとんど見受けられない。物腰も発言も温和で含蓄があり、実によく笑う。むやみに他人ともめたりもしないのだ。しかしのその一方で、ここだけは絶対に譲らないという部分に関してはとてつもない厳しさを示す。穏やかで冷静なリーダーの勘兵衛が農民達の自分勝手な行動に対して、刀を抜いてまで叱り飛ばすシーンなどは本気を見せ付けられてドキドキする。そしてそれら全てが矛盾せず、クッキリと印象的に浮かび上がり心に残る。
個性とは際限ないエゴの表出、というスタイルに一切頼らず、にこやかで温和で口数少ない常識人であっても、心の足腰がしっかりしていればかくも人間は個性的になれるのだと、今更ながら思わされるその感覚が私にとって大変に心地いいのだ。